寺ネット・サンガ 事務局


寺ネット・サンガ「坊コン」「お坊さんあるある!」

2014-04-05


プチ法話「お坊さんあるある」

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2014年2月25日、寺ネット・サンガ「坊コン」が行なわれました。お坊さんが思わず「あるある!」と頷いてしまうようなお話を伺います。


本日のプチ法話は、八王子市延立寺のご住職、松本智量さんです。





○予定は未定


急な用事が入ることが多いお坊さん。チケットの前売り券は買わず、旅行も急に中止になることを常に念頭に置いているそうです。

いつも「予定は未定」と語る松本さんは、先日雪の影響で交通機関が乱れた際、多くの方が怒っているのを知ってこんなことを考えたそうです。
自分の予定が絶対のものであると思っていると、予定通りにいかなかった時に何者かに侵害されたように感じ、被害者意識を持ってしまうこともあるのではないでしょうか。

そのことで、恨まなくてもいい人を恨んでしまうかもしれません。





○思いのままにならない命を、私たちは生きている


日本人の平均寿命の80歳とされます。ほとんどの人は、自分はだいたいあと何年、何十年生きるだろうと「予定」を立てて生きています。

ところが、事故や病気など命が尽きる瞬間は、自分の都合を超えたところにあるのです。
自分の都合を離れてやって来る「死」さえ、私たちはコントロールしたいと願います。

「生老病死」という言葉の中で、「生」の文字から「自分の思い通りに姿に生まれなかった」という意味を知る時、同時に「思いのままにならない命を、私たちは生きている」ということを知ります。


予定や「こうであるべき」という理想に対してこだわりが強すぎると、知らない間に自分の鎖で自分を縛っているかもしれません。





○コントロールしない


先日、松本さんが公道の脇に雪を除けていた時のことです。「お坊さんはみんな自分をいい人だと思っている」と語る松本さんは、この時も「一人で雪を除けた自分っていい人!」と思っていたそうです。
ふと、近所の方が声をかけてきました。きっと感謝の言葉かなと思ったところ……「そこに雪を置かないでくれる?」


これは意外な反応でした。一瞬、松本さんは怒りを感じたそうです。

すぐに「こういう方もいらっしゃる」と気持ちを切り替えました。自分のコントロールの範囲外であることを受け入れ、怒りの感情に捕われずに過ごすことができたそうです。



他人に対しても「この人はきっとこう言ってくれるだろう」と自分でコントロールしようとすると、異なる反応が返ってきた時に怒りや恨みが生まれます。


コントロールしないほうがラクなこともあるのではないでしょうか、と松本さんは語りました。





最近何に怒りましたか?

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テーブルごとに分かれて、お坊さんを中心にグループディスカッションを行ないます。

テーマは「最近何に怒りましたか?(怒られましたか?)」「自分がコントロールできないことは何ですか?」です。





○最近怒ったことについて


・ニュースで報じられる立場を忘れた失言問題について。


・マナーを守らない人に対して。それを注意しようか迷っている自分に対して。


・家庭内のごたごたや、身内に対して。


・仕事がうまくいかない時に、自分に対して。





また、上司やお師匠さんに怒られた時の怒りを感じたという経験を語る方もいらっしゃいました。数十年経って、根気よく叱ってくれたことに感謝の気持ちを感じているそうです。

時間や距離を置くことも大切という意見がありました。


あるお坊さんが、仏教用語の三毒(さんどく)についてお話をしてくださいました。三毒とは人間の良くない性質を示す「貪・瞋・癡」(とん・じん・ち)の総称であり、瞋(じん)は感情的になって怒ることだそうです。

三毒に含まれるほど、人の怒りの感情というのはコントロールが難しいようです。





怒る=悪いことではない

ディスカッションで出た意見について、さらに参加者たちで意見を交換しました。





・怒らない人がいい人ではない。


・怒る時は自分を見失うことが多いので、いったんその事柄から時間や距離を置く。「何のために怒るのか」という目的を冷静に見る姿勢が大切。


・過去の歴史の中には、社会に対する怒りをもって偉業を達した人もいる。怒りの感情そのものを「悪」と決めつけることはできないのではないか。


・怒ると叱るは違う。





○「慈悲の怒り」について


お不動さまや明王さまなど、怒りをもって私たちを正しい方向へ導いてくださいます。「慈悲の怒り」は人がやろうとしても難しいので、仏さまに託しているのではないかと、あるお坊さんがお話をしてくださいました。





○怒られたい気持ちも?


大人になってからお師匠さんから怒られて、新鮮な気持ちになったという方がいらっしゃいました。最近では「怒られたい」と思っている方がいるというお話もあり、叱る・叱られるという役割があるのではないかという意見がありました。





○まとめ


「怒り」についてのテーマは、本日プチ法話をなさった松本さんから提案されたものです。
突発的に起こる「怒り」という感情は厄介です。性急に結果を求められる現代人にとって、さらに「怒り」の厄介さは増してきているのかもしれません。


「予定は未定」というお話から、自分の都合を離れることの大切さについて考えさせられました。これからは、より穏やかに日々を過ごすことができそうです。






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