寺ネット・サンガ 事務局


寺ネット・サンガ「坊コン」「第5回お坊さんあるある!」

2014-07-30


プチ法話「お坊さんあるある!」

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2014年7月28日(月)、寺ネット・サンガ「坊コン」が開催されました。「お坊さんあるある!第5回目」は、大阪にある真言宗の興徳寺のご住職、青木隆興さんのお話です。

前日、青木さんは傾聴ボランティアのため飛行機で大阪~宮城を日帰りで往復、28日は大阪で月参りの後、3時新大阪発の新幹線に乗って東京の「坊コン」会場に到着したそうです。

多忙なスケジュールをこなす青木さん。普段はどんな日常生活を送っているのでしょう。

青木さんのお寺では年に三回の大きな行事の他に、毎月全部の檀家さんの家でおつとめをする「月参り」があるそうです。

関東では馴染みの薄い「月参り」について、お話を伺いました。



○月参り(つきまいり)

月命日に毎月お坊さんがお宅にお参りすることを「月参り」と言います。例えば28日が命日の場合、毎月28日に檀家さんのお宅にお坊さんがお参りに伺います。

関西では月参りが盛んで、青木さんは毎日数件のお檀家さんを訪問するそうです。

毎月決まった日にお参りに伺うので、月参りの日は檀家さんも仕事を休みにするなど調整しているケースもあるそうです。中にはお経を読んでいる最中にペットの犬がずっと吠えるので、月参りの日は犬のトリミングの日と決めている檀家さんもいらっしゃるとのこと。

「月参り」の馴染みのない地域では、興味深いお話です。



○校区の中に約五十ヶ寺ある寺町で

大阪の興徳寺は、寺町にあります。小学校の校区内だけでも約五十ヶ寺もあるそうです。

そのため、青木さんが自転車に乗って移動していると、「ご苦労さん」と気軽に声をかけられることもしばしば。

優しい言葉もあれば、厳しい言葉をかけられることもあります。

青木さんが自転車で去る時に、生活困窮者から「神も仏もあるかい!」と言われたというエピソードもうかがいました。

東京よりも人々が気軽に声を掛け合う環境が大阪にはある、と言います。



○子どもたちからの質問

小学校の校区の中にあるお寺ということで、職業を知るために、子どもたちが興徳寺へ訪れることがあります。その時、子どもたちから「なぜお賽銭をするのか?」という質問が出たそうです。

お賽銭は「お布施」の一種ですが、現代のお布施は「お金で払うもの」という感覚が強くなっています。

自分の大切なものを捧げて、仏さまのお力を頂くというのが本来の「お布施」の意味。

お坊さんは袈裟をまとっていますが、古くは「糞掃衣(ふんぞえ)」といって、汚くなったボロ切れを人々に施してもらって、つぎはぎにして作ったのが始まりと言います。そこで「布」を「施す」と書いて「布施」というそうです。



「お金がないとお布施ができないのか?」という問題について、青木さんからお話がありました。







七つのお布施について

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『雑宝蔵経』(ぞうほうぞうきょう)に、お釈迦さまは「無財の七施(むざいのしちせ)」を説かれています。

お布施の根本には、相手を思いやる心があります。どのように実践したら良いのか、青木さんからわかりやすい例と一緒に説明して頂きました。



○七つのお布施

・房舎施(ほうじゃせ)・・・泊るところがなくて困っている人に寝泊まりする場所を提供してあげましょう。

今の時代には合わない教えですが、こういう気持ちを持つことを大切に。



・牀坐施(しょうざせ)・・・自分が座っているところを譲ってあげましょう。

「私はまだ若い!」などと言わずにお布施をありがたく受けましょう。



・言辞施(ごんじせ)・・・思いやりをもって優しい言葉で接する。

席を譲られて「ありがとう」と言うことは、お布施の施し合いです。



・和顔(わげんせ、わがんせ)・・・にこやかな顔で接しましょう。

赤ちゃんが笑っていると、周囲も自然ににこやかな顔になるように、私たちもにこやかな顔で周囲を和ませましょう。



・眼施(げんせ、がんせ)・・・やさしいまなざしで見ましょう。

相手の心をなごやかにさせるように、やさしいまなざしで。



・心施(しんせ)・・・相手の気持ちになって。

相手がしあわせになることを願って、いろんな想いを抱いて相手を思いやりましょう。



・身施(しんせ)・・・自分のからだでできることを奉仕する。

重い荷物を持っている人を助けたり、自分の体を使ってお布施をしましょう。



○青木さんへ質問タイム

Q.どの宗派も月参りをするの?

A.はい、月参りの文化はまだ100年経たないそうです。お寺側から「待っていても誰も来ない」というところから始まった文化ですが、その点は大阪っぽいなと思います。



Q.月参りのある地域は?

A.西日本では月参りはポピュラーですが、北海道でも聞いたことがあります。



新潟にいたお坊さんから、補足がありました。

半数くらいのお寺で月参りをしていたような気がしますが、現在は少子高齢化で人が減り、震災などの関係で減っているかもしれないというお話です。

都内のお坊さんからは、平日は留守にしている家庭が多いので月参りは難しいというお話もありました。



Q.お坊さんは家の中のプライベート空間に入っていくことができるという特殊な職業ですが、家庭の中で何か変化に気がつくことはありますか? また、その際どのような対応をしていますか?

A.家族は毎日接しているので、変化に気がつきにくい面もあります。月に一回伺うと、些細な体調の変化に気がつくこともあります。

例えば、長年過ごしている夫婦の場合。「お茶だしに時間がかかっているな」と様子を見に行くと、奥さんが台所で同じことを繰り返していることがありました。いつも一緒にいる旦那さんの方は奥さんの変化に気がつかないようです。

本当に気がつかないケースと、家族の変化を認めたくないというケースもあり、対応については今後の課題だそうです。



参加者の質問に対して、青木隆興さんから貴重な現場の体験談を交えてお答え頂きました。





坊コン談義「意識をもってお布施をしてますか?」

「(人のことを思いやって)意識をもってお布施をしてますか?」「あなたの気になるお布施ベスト」をテーマに、お坊さんと参加者でグループディスカッションを行ないました。

それぞれの意見を、グループの代表のお坊さんが意見をまとめて発表しました。



・大阪では困っていると何でも教えてくれる人が現れる。ヨーロッパの町で、人々に親切にされたことが印象に残っているという意見もあり、大阪はヨーロッパ的なところもあるのかな?

・良いことをしようとすると見返りを求めてしまう。自然に体が反応することがお布施ではないか。

・和顔施(わがんせ)の教えは大切だと思った。みんなが少しずつ心がけることで、お布施が少しずつ大きくなって、まろやかな、丸い世の中になるのではないか。

・本が好きなので、図書館などに寄贈したい。

・今まで子どもや親にお布施できていなかったのではないかと反省した。

・食事をしている相手と楽しく過ごすこと。一緒に食べてくれてありがとう、という気持ちもお布施かもしれない。さりげない日常で、お布施を施し合っているのかもしれない。

・お布施をする、しない以前に、そういうことにアンテナをはっていないとできないのかもしれない。

・自分に余裕があると、お布施も実践しやすいのではないか。



○質問タイム

「反射的にするお布施と、いろいろ考えてするお布施がある。どうせ打算があるのだからと理屈で考え始めると、良いことを実行できないし、素直に受け取ることもできなくなる。潔白になりすぎると、良くないのでは? 仏教的に考えるとどういう解釈になりますか? 」という質問がありました。

鋭い質問に「少し時間が欲しい」とお坊さんたちも考え込んでいたようです。





打算のあるなしに関わらず、手放した瞬間に「布施」は独り歩きしているのだから余計なことは考えなくてもよい。余計なことを考えると「執着」につながってしまうという意見や、他人から偽善と言われても、良いことをしようという気持ちを持ち続けることが大切、とお坊さんからお話がありました。

ゲーテやマザーテレサの言葉を引いて、このような考えは世界で共有されているものなのかもしれないという指摘もあり、「悩みながらも、良いことをしようという意識が大切ではないだろうか」と問いかける形で今回のディスカッションは終了しました。



○まとめ

「相手にとって本当に良いことをしているのだろうか?」「おせっかいだと思われないだろうか?」という意見に、多くの参加者が頷く場面も見られ、共通の迷いを抱いていることを実感しました。

また、施すともっと欲しがる人がいる。席を譲るのを強要する人もいるという指摘もあり、お布施を受け取る側の心を問う声も聞かれました。

お布施を施し合う関係性が深まることで、世の中はもっと居心地が良くなるのかもしれません。

迷いながらも、行動することの大切さについて考えさせられた今回の「坊コン」。「お布施」の根本である「相手を思いやる心」を大切に、まずは「七つのお布施」から実践していきたいと感じました。






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