寺ネット・サンガ 事務局


仏教ひとまわりツアー 各宗派本山めぐり「總持寺」

2014-11-05


仏教ひとまわりツアー 各宗派本山めぐり「總持寺」

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2014年11月1日(土)、寺ネット・サンガ主催「仏教ひとまわりツアー」が開催されました。「修行僧の毎日」に焦点をあてた全4回ツアー「各宗派本山めぐり」も、いよいよ最終回となりました。今回は横浜市鶴見区にある曹洞宗大本山總持寺です。



はじめに總持寺の本山布教教化部の蔵重宏昭老師から、お寺のご縁起や曹洞宗について、修行の要である「坐禅」についてのお話を伺いました。

修行僧(雲水)の毎日は、坐禅に始まり、坐禅に終わります。日々のスケジュールは「清規(しんぎ)」と呼ばれ、新米のお坊さんも、えらいお坊さんも同じ日程で生活しているそうです。



※修行僧のスケジュールについては、前回の「坊コン」にて正山寺ご住職、前田宥全さんの「禅の生活」でお話を伺っています→http://www.eijuin.jp/News/view/9/508



○調身・調息・調心(ちょうしん・ちょうそく・ちょうしん)ー生活をととのえるー



「調身・調息・調心」=身をととのえ、呼吸をととのえ、心をととのえることの大切さについてお話がありました。

人間の身でありながら仏であり続けられたお方、お釈迦さまは坐禅によってお悟りを開かれました。曹洞宗では「私たちも及ばずながらお釈迦さまの真似していきましょう」という心で、坐禅の修行を大切にしているそうです。

世の中は「縁起」しており、お互いがお互いにかかわりあって調和しています。ところが私たちの心の中には「無明(むみょう)」と呼ばれる根本的な煩悩があり、油断するとわがまま心が出てきます。「私が、私が」という心を抑えて、調和する生活を送るために、日常生活をととのえることは大切なことです。

日々の繰り返しの中で、人は怠け心が出てきます。お互いに注意し合い、励まし合って、生活をととのえる中心となるのが坐禅です。



○基本姿勢は「精進(しょうじん)」=精にして雑ならず、進んで退かず



「精進」=精にして雑ならず、進んで退かずとは、「積極的な気持ちで、ひとつひとつのことを丁寧にやっていくこと」です。作法が細かく決まっているのは、ひとつひとつのことを丁寧に行なう「精進」の心を大切にしているからだそうです。

また、「喫茶喫飯(きっさきっぱん)」という言葉についてもお話がありました。「喫茶喫飯」の言葉には、食事の時は食事のことだけをする、というシンプルな教えが含まれています。日々、その時その時のことをきちんと丁寧にやっていくことで、いざという時に行動に移すことができます。丁寧に物事をこなすことで、人に対しても、きめこまやかな対応ができるようになります。

「丁寧に、その時その時をきちっとやっていくことが、本物の思いやり(=慈悲)につながるのではないでしょうか」と、お坊さんからのお話がありました。

修行僧の毎日

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○修行僧が最初に苦労すること



新米お坊さんが修行の最初に苦労するのは、食事の作法を覚えることだそうです。

食事は「応量器(おうりょうき)」と呼ばれる重ねの器を用います。お箸の上げ下ろしまで細かい作法が決まっているそうで、覚えなければ食事ができないので大変なのだそうです。



○雑巾がけで1キロ超え



修行の中には「作務(さむ)」と呼ばれる、いわゆる「掃除」があります。

お寺で一番長い「長廊下」は直線距離で約164メートル、周回は約1キロ弱あるそうです。

修行中のお坊さんたちは、毎日朝と昼の2回、3往復ほど雑巾がけをします。距離を合計すると、なんと1キロ超えです。

境内参拝の際に、廊下を歩きながら、床がピカピカなのにはびっくりしました。ワックスではない、艶のある光りかたで、お坊さんたちが毎日雑巾がけしている姿が思い浮かぶようです。

「境内参拝」「坐禅体験」

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お坊さんのガイドで境内を参拝しました。千畳敷きの大祖堂の広さに圧倒され、廊下がまっすぐで長いことが印象的でした。

現在お寺で修行中のお坊さんは150名ほどだというお話です。たくさんのお坊さんたちが走り回っているイメージがありますが、広い境内ではたまにお坊さんとすれ違うくらいでした。



○坐禅体験



坐禅の作法について、修行中のお坊さん二名から丁寧に説明を受けました。

まずは合掌の作法からです。手のひらをピタリとそろえ、軽く肘をはります。

合掌しながら礼をする「合掌低頭(がっしょうていず)」や、待っている時や歩く時の「叉手(しゃしゅ)」の作法も教わりました。

坐禅の一人分のスペースは、「単(たん)」と呼ばれます。単の手前に「牀縁(じょうえん)」と呼ばれる木の板の部分があり、食事をするスペースなので、手足が触れないように気をつけて単にあがります。

坐禅の際は、坐蒲(ざふ)と呼ばれる丸いクッションのようなものを用います。坐蒲にも作法があることに驚きます。その他、スリッパの置き方から足の組み方など、細かい作法を教わりました。

手は「法界定印(ほっかいじょういん)」を結び、目は半眼にして、軽く視線を下に落とします。「調身・調息・調心」を心がけ、心身共に落ち着かせます。



途中、考えが浮かんで来たり、眠くなった時は、静かに合掌します。警策(きょうさく)をお願いする合図だそうです。警策とは、肩をピシャリと打つ、平たい棒のようなものです。

警策を頂いたら合掌低頭し、再び法界定印を結びます。



約40分間、仏教ひとまわりツアーの参加者は全員坐禅体験をしました。その間に、何度か「ピシッ、ピシッ」と聞こえてきました。打たれた方の感想はどうだったのでしょうか。

自分は「みんな何を考えているのだろう」と雑念が浮かび、警策をお願いしました。警策を頂いた瞬間はビックリしますが、気が引き締まり、痛みもすぐになくなりました。



○まとめ



「健康のために規則正しい生活が大事」と、頭ではわかってはいても、なかなか実行できないものです。

しかし「喫茶喫飯」のほうはどうでしょうか。最近では歩きスマホが危ないということで、注意書きが駅のホームに貼られています。また、食事の時にもテレビを見ていて会話がない、スマホやゲームをしながら食べているという光景は、現代日本人の日常風景になりつつあります。



本日の「仏教ひとまわりツアー」は、そのような日常の中に、調和していない自分、ととのっていない生活を見いだすきっかけになるようなお話がありました。

お坊さんから「参考になる点があれば真似してください」というお話もあり、より良い日常生活へ提案を頂いたような気がします。




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