葬儀社さんの考える「供養」~寺ネット・サンガの坊コン葬儀社の目で考える『供養』

葬儀社の目で考える『供養』

お坊さんと直接語り合える場「坊コン」が2016年5月10日に開催されました。『こんな供養は○○だ!第2弾』の今回は、葬儀社さんから見た供養について。
お話くださるのは、株式会社 蒼礼社(そうれいしゃ)代表取締役の塩田 正資さんです。

塩田さんは中学生の頃にお父様を突然で癌で亡くされて、そのあまりにもあっけない「死」に大変ショックを受けました。大学では哲学科に入り、卒業後は“人の生き死に携わる仕事がしたい”と葬儀業界に入り経験を積み、1級葬祭ディレクター資格を取得。3年前に「蒼礼社」を設立され、寺ネット・サンガに参加するようになったそうです。今回はこれまでの25年の葬儀業界での経験をもとにお話くださいました。


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《「葬儀社の目で考える供養」蒼礼社 代表取締役社長 塩田正資さん》

○首都圏の火葬場事情
近頃は、1週間待ちは当たり前という首都圏の火葬場の順番待ち。亡くなる方が年間130万人を超えている日本の現状がこういったことにも現れています。

このところ感じるのは直葬が多くなったなということ。データでも、関東圏では5件に1件以上が直葬になっています。ひと昔前は朝9~10時頃と昼の2時~3時頃は比較的空く時間帯でした。なぜかというと、通常の仏教形式での葬儀の場合は、丁度その時間帯が葬儀の最中に当たるからです。しかし、ここ数年は直葬をする方でその時間帯が混んできました。

以前は、主に身内のいない方や経済的な理由のある方が直葬を選択していたようですが、最近は特にそういった理由もなしに直葬を選ぶケースが少なくないのです。直葬を望む方は、コストパフォーマンスで葬儀を考えているのかもしれません。「葬儀はその場限りのもので、後に残るものではない」と思うのでしょう。でも本当にそうでしょうか。

○亡くなり方によるその後
病院で亡くなる、自宅で亡くなる、「ピンピンコロリ」で亡くなる。
あなたはどれで亡くなりたいと思うでしょうか。病院で亡くなった場合は、その後の段取りがすんなりと進みます。
ところが、「ピンピンコロリ」の亡くなり方というのは、いわゆる突然死なので警察が介入します。亡くなる原因が判明するまで監察医が調べるのです。事件の可能性や伝染病の可能性もあるわけで、死因がわかるまでは家族も会うことができないのです。あとのことを考えると「ピンピンコロリ」という亡くなり方は実は大変なのです。

○自分の大切な人をどのように送りたいか?
昨今の「終活」では”自分の最期”をどう考えるかといったことが話題になります。なぜか自分の事ばかりを考えようとします。しかし、葬儀は大抵ご遺族の希望が優先し、亡くなった方ご本人の望み通りにはいかない事もあるものです。
ご遺族が決めたことに葬儀社は逆らえません。
私は常々「自分の大切な人をどのように送りたいか」ということをもっと考えても良いんじゃないかと思っています。今日はこの後、このテーマで皆さんに話し合って頂こうと思います。



塩田さんのお話は、死後のご遺体の様子やエンゼルメイクの事などにも及びました。最後に塩田さんは「この文章から何かを感じ取ってくだされば・・・」と、東山魁夷氏のエッセー『風景との巡り合い』より“風景開眼”の中の冒頭の一章を朗読してくださいました。
以下はその文章中の一文です。

「私は生かされている。野の草と同じである。路傍の石と同じである。生かされているという宿命の中でせいいっぱい生きたいと思っている。せいいっぱい生きるなどということは難しいことだが、生かされているという認識によって、いくらか救われる」    
                   東山魁夷「風景との巡り合い」より

葬儀社さんの考える「供養」~寺ネット・サンガの坊コングループディスカッション お坊さんと一緒に考えよう!

グループディスカッション お坊さんと一緒に考えよう!

各グループにお坊さんが入ってリーダーを務め、各グループの意見をそのリーダーのお坊さんがまとめて発表します。今回は塩田さんのお話を踏まえて「大切な人の葬儀をあなたはどうしますか?」のテーマで話し合いました。いつも通り、話したくない場合は無理に話さなくていいというルールの基で自己紹介をしながら参加者の皆さんとグループディスカッションを楽しみます。


・縁ある人達に来てもらって、想い出をシェアしたい。

・できれば亡骸の傍にいて、最期まで丁寧に送ってあげたい。

・年齢によって、また仕事などによっても葬儀の内容が変わるのでは?若くして亡くなった場合は大勢参列するなど。そういった葬儀についてはその故人らしい葬儀が良い。

・2回に分けてやりたい。一回目は身内だけで会食をしてゆっくりと。2回目は大勢で会費制でやりたい。

・昔は一般葬が当たり前だった。親からは簡素にと言われているが、子どもとしては一般葬で見送ってあげたい。

・時間のない中で判断できない気がする。葬儀社に良いように誘導されてしまっても分からないかもしれない。

・大切な人の葬儀でコスパから直葬を選ぶとは思わない。

・「思い」に残る葬儀が出来ればいいのではないか。

・家族葬の場合は同じ人しかいないので、お通夜と葬儀で2晩に分けてやるのもどうかなと。お通夜なしでもいいんじゃないかと思う。

・人生を全うした御目出度いといえるような亡くなり方の方の場合は葬儀は葬儀でやって、後でゆっくりと偲ぶ会をしてもいいのではないか。

・生前葬も一つのアイディアかもしれない。

・地域のコミュニティの中で手作りのお葬式をやっていた時代とは変わり、手作りの力も無くなっている。

・高齢者でも知識がない方もいて、パッケージ化されたお葬式に流れてしまうのでは。

・お坊さん側がいくら頑張っても企業やマスコミの力に負けてしまう。そういう力に一般消費者が流されてしまう現状が残念。

・寺ネットサンガで集まった人達と“サンガ葬”が出来る様、このコミュニティが続いていくことを望んでいます。

葬儀社さんの考える「供養」~寺ネット・サンガの坊コン質問コーナー&お坊さんとの意見交換会

質問コーナー&お坊さんとの意見交換会

日頃からなかなかお互いに質問出来ない間柄のお坊さんと葬儀社さん。この機会にと、聞きにくいことを聞く事が出来る貴重な時間となりました。

塩田さんからお坊さんへは「葬儀ではお坊さんの道具はなぜ葬儀社が用意するの?」「炉前で戒名を渡すなんてことが本当にあるのでしょうか?」といった質問も飛び出しました。また、お坊さんからは「お坊さんへ言いたい困ったことは?」なんて言う質問も飛び出し、会場は和やかな笑いに包まれました。

塩田さんは「葬儀というのはとても地域性が強いので、大手だからといってそれほど全国に広がっていかないのが現状です。年間100万人以上の死亡者数から考えると、業界最大手の葬儀社といえど、シェアはたった1%に過ぎないんです。
元々、葬儀業というのは、装具の貸出しなどから始まっているものですから、どの町にも1軒はあった。そういうところが多いので、小さな葬儀社がいまだに結構あるのです。葬儀業界では、将来は中堅どころが無くなっていき大手が残っていくと言われていますが・・・」と葬儀業界の現状をお話くださいました。

質疑の回答の中で、塩田さんが「私達は供養の場を作ること、ご遺族の希望をまとめあげることが仕事だと思っています」とおっしゃっていたのが印象的でした。

悲しみに暮れるご遺族に寄り添って粛々とセレモニーを進行する葬儀社の役目を思い、「供養」とは、遺族と故人の関係性の上にあるものであり、葬儀社はあくまでもセレモニーの場を作ることが仕事だという考えの元にあるのだとわかりました。

意見交換では、遺体の処置やケア、首都圏の火葬場事情や葬儀業界の未来についてまで話が及びました。お坊さんと気軽に話が出来る機会を求めて、何人か他の葬儀会社の方々も参加しており、興味津々に質疑応答に耳を傾けていらっしゃいました。


お坊さんと気軽に話してみたいとお考えの葬儀社さんは、是非、寺ネットサンガの「坊コン」にいらしてみてはいかがでしょうか?

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