「墓じまい それぞれの思い」お墓じまいの現状はどうなっているのかな?

お墓じまいの現状はどうなっているのかな?

12月13日(火)、今年4回目となるネットサンガの坊コンが日本橋の貸会議室にて開催されました。
早いもので今年最後の坊コンです。今回のテーマは「墓じまい それぞれの思い」と題して墓じまいの現状について話し合いました。法話はネット・サンガ代表の吉田尚英さん(日蓮宗 永寿院住職)そして民間業界事情を、供養コンシェルジュの樋口清美さんから伺いました。

「墓じまい それぞれの思い」【寺から見た墓じまい~吉田尚英さんのお話】

【寺から見た墓じまい~吉田尚英さんのお話】

ここ数年、散骨や樹木葬、永代供養墓などがマスコミで多く取り上げられるようになりました。
未婚や配偶者を亡くした単身者などと一人暮らしの高齢者が増えています。
そのような背景のもと、墓じまいが増える事情が浮かび上がってきます。

お墓の跡継ぎがいない。また、複数のお墓を所持しているなど、墓じまいを余儀なくされる方もいます。自分が元気なうちにお墓を始末したいと言う声も聞かれます。跡取りがいても負担をかけたくない、あるいは跡取りに継承の意思がないなどのケースもあるようです。

“お墓がなくなる=おが淘汰されていく“ということはお側にとっても深刻です。
墓じまい」が進むと檀家が減ります。特に地方は厳しい状況となっています。
コロナ禍も後押ししてさらにおの経営を圧迫。
京都などの観光院では拝観料収入が減少し、職員の僧侶をリストラせざるを得なくなったということも聞いています。

また、「イエ」意識の変化で、ご先祖さまを守るという意識が希薄になっていることも一因となっています。さらに、人と関わるのが面倒で近隣とのお付き合いが減少しコミュニケーションが減ってしまったこともあるでしょう。

今日は私が11年前に作った“葬儀曼荼羅”を見ながら「墓じまい」について皆さんと考えてみようと思います。

●葬(ほうむる) 
「葬」という文字は、草かんむりで死という文字を挟む形になっています。
草むらに死体を隠す意味がこの漢字にはあります。
死体を放置しておくと「九相図」に描かれているように腐敗し、不衛生で醜い姿をさらし続けることになる。それを草むらに隠すという意味が「葬」の字には込められています。
そして、遺体の処理や鎮魂のため土葬・火葬・埋葬など、地域や時代によってさまざまな「葬る」方法が行なわれてきました。
*「九相図」とは9段階に分けて死体の様相を表した江戸期の頃に描かれた絵図

●儀(のっとる)
「儀」には社会的なお別れをするための儀式の意味があります。通夜・葬儀・告別式など、故人を偲び、別れのセレモニー的なことをすることです。
しかし、ネット情報などによる急速な変化で儀式の簡素化が進み、人々のコミュニケーションが崩壊し、社会から疎遠となり、孤独になる人が増えました。
高齢で身内や友人知人もいないとなると、まったく縁のない人が故人の尊厳を失わない最低限のことしかできなくなります。儀式は無く、火葬するだけで、しかも悲しくもない。遺体を処理するのみで簡素化されたものとなります。
自分も将来そうなる可能性があることを創造し、直葬、散骨を希望する人、墓じまいをする人が出てきた現況も理解できなくもありません。

●弔(とむらう)
魂を弔う。鎮魂は心の問題です。これに関しては大きな変化はないような気がしています。
でお経をあげたり、仏壇やお位牌を作って弔い、故人を偲び、魂が仏さまの様の元にあるように、安らかであるようにと祈る。これは日本人として元々DNAの中にあるような”思い”とでもいえるでしょうか。
お釈迦さまのご遺骨を仏舎利として塔を建てて供養したように、お墓、お骨は仏さまそのもの=信仰の対象だったはずですが、それが希薄になってきた。それは我々僧侶側にも責任があるのでしょう。昔は集落に一軒ずつおがあり、そこのお坊さんが言うことが唯一の仏教の常識として村人の中に根付いていました。現代は急速に情報化が進んだことで、さまざまな宗教について学び、自由に信仰を選択することもできます。しかし、それが希薄化に拍車をかけているように思えます。

●悼(いたむ)
亡くなった方への思い、喪失や悲嘆、故人との思い出などのなかで、故人を思い出す対象としてお墓があると思います。多忙な中でも時間をつくり墓参りに行く方や、手元供養などで故人を偲ぶ方など、故人を思う人の気持ちに変化はないと思います。


お墓は、もともと自分の生きた証を後世に伝えるためのものだったはずです。
それが今では「片付けるもの」「しまうもの」とされて、180度の変化が世の中に起こってきています。
お墓を守る側も、おとの付き合いが負担となって、残されても困るもの・重いものと感じられているようです。父方・母方と複数のお墓を維持している方も少なくありません。経済的な負担、心理的な負担もあるでしょう。
そのような事情にマスコミの情報も相まって墓じまいが加速されているのだと感じています。

永代供養としておや霊園に管理を委託する方法もありますが、も霊園も永遠に続くとは限りません。あえて墓じまいをせずに、お墓を歴史的遺物として朽ちるまで残すという選択もあるとも考えています。

「墓じまい それぞれの思い」【墓じまい~樋口清美さんのお話】

【墓じまい~樋口清美さんのお話】

“お墓じまい”とは、今あるお墓からお骨を出し、そのお骨をどうにかすると言うこと。
では出したお骨の先はどうなるのでしょうか?改葬先はおおよそ四つに絞られます。
以下は東京周辺の改葬先にかかる、1名分の費用の大まかな目安です。
・納骨堂 40~100万円
・永代供養墓・合祀墓 5~30万円
・樹木葬 10~100万円
・散骨 5~30万円  

[墓じまいの流れ(院墓地の場合)]
今あるお墓をどうするかを家族・親族で話し合う→ お墓のあるお(住職)に墓じまいをしたいと伝える。本来、おの同意を取ることをしなければならないのに、ここを丁寧に行わないことでトラブルになるケースが多いと樋口さんは言います。→書類関係を整える→お骨を移動する

●必要書類  
① 埋蔵証明書(埋葬証明書)・・・お骨が確かに●●にあるという証明書。
② 受入証明書・・・お骨の移動先から受け取ります。
③ 改葬許可証・・・埋蔵証明書と受入証明書を、移転元のお墓の自治体の役所にもっていく。この2種類の書類を提出後に役所から「改葬許可証」を交付してもらう。これでお骨の移動ができるようになる。

●お墓じまいにかかる費用(大まかな目安)
・墓石撤去費用(石材店)1㎡あたり約10万~15万円程度 
墓地から墓石を撤去して更地にし、所定の場所に墓石を処分する。
・骨壺の取り出し(石材店) 3万~
・閉眼供養のお布施 3万~10万程度 お車代・お膳料を用意することも
・おへのお布施(今までのお礼・離壇料と認識される場合もある)無料~20万程度
 ※お布施は今までの関係性やおとの話により一概には言えない

●お骨の処理(改葬先によって必要になる)
洗う 1柱 数千円~3万円程度
粉骨 1柱 数千円~3万円程度

しまうお墓の大きさや、取り出したお骨の状態、選んだ行先、おのお布施など個々で金額はかなり異なってきますが、以上を目安に合計していくと、総額でどれくらいになるかが大まかに分かります。


【グループディスカッション お坊さんを交えて】
お坊さんや葬儀業者、一般の方とそれぞれの意見がありましたので、簡単に箇条書きにしてみました。

・戦時中に被災した遺骨収集の紹介イベントを見てきた。戦死した方の遺骨収集を通して歴史を学ぼうとする人もいる。そういう人にとってはお骨に対するイメージが違う。
・お墓にあるなしに執着しない方がいいのではないか。
・亡くなった方とどのくらい縁が深かったかなどによってお骨やお墓への思いが違う。
・それぞれ個人個人が考えるお骨やお墓への思いがある。
・故人の希望で散骨をしたとしても、遺族がお墓参りができないと悩むケースもある
・親鸞は遺骨を川に流せと遺言したのに、弟子がそれを出来ず、結局お墓を作ってしまった。でも、それで人が集まることになった。
・沖縄のお墓は広いスペースがある。墓前に集まって親族が宴会をするための祭事場の意味がある。
・人が集まる口実としてのお墓の役目というのもあるのでは?
・都内のお墓は土地が狭く隣接している。お墓をよりどころに親族が集まる動機付けになる。
・大阪の一心の様に、何万体もの遺骨で大仏を作った例があり、人気になっている。
・散骨してしまった後、親族がよりどころを求め、遺物を奉納したお墓を作った例もある。
・ガンジーはガンジス川に散骨されたけど、有名人ではない普通の人が散骨をすると、その後の遺族が困ってしまうことにもなるのでは?
・直葬(火葬だけしてお坊さんを呼ばない)する人は増えているが、あとから位牌だけ作りたいと言ってくる人もいる。
・お参りする対象が写真だけというのは心細い。形があることを大切にする日本人の心がある。儒教的な姿勢に近い。
・故人の思いと、残された人の思いは違うこともある。
・エンディングノートに書いてある通りに遺族がやったが、予想以上にお金がかかりストレスになった例がある。
・故人の思いと遺族の思いが違った場合は相談できるお坊さんがいると良いアドバイスが貰える。
・骨に執着すると問題が起こるような気がする。
・骨ではなく墓石にお参りをするような感じでいいのでは?

などなど。
墓じまい」が自分の身に実際に起きている参加者のお話も伺い、いろいろな思いがあると実感しました。今日のディスカッションがお墓に悩んでいる方の参考になれれば幸いです。

ネット・サンガ関係者のみなさま一年間お疲れ様でした。

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