第13回 仏教ひとまわりツアー「お骨の行方」 樹木葬 延寿院住職のお話 寺ネット・サンガ 事務局 仏教 ツアー 寺ネット・サンガ
第13回 仏教ひとまわりツアー「お骨の行方」 樹木葬
仏教ひとまわりツアー
2014-04-05
延寿院住職のお話
2013年9月1日(日)八王子市川口町の延寿院にて、寺ネット・サンガ主催「仏教ひとまわりツアー」第4段『お骨の行方』が行なわれました。
今回のテーマは樹木葬です。
里山型樹木葬墓地「東京里山墓苑」について、延寿院ご住職の及川一晋さんよりお話を伺います。
及川住職が延寿院のご住職になられたのは平成8年のこと。新宿からこの川口町を初めて訪れた時、豊かな自然を感じて「いいなあ」と思ったそうです。
このあたりの里山はコナラなどの広葉樹が生い茂り、かつて近所の農家さんたちは落ち葉を肥料にし、里山から薪を取って生活していました。しかし安価な外材輸入が始まると、やがて里山は放置され、笹やぶだらけの荒れた山になってしまったそうです。
樹木葬の形態として、区画を購入して骨壺で埋葬する「個人墓」、合祀して埋葬する「合祀墓」、また無縁仏としてお地蔵さまのもとに眠る「無縁墓」があります。
いずれのお墓も住職が日々供養なさって、遺族の方はいつでもお墓参りができます。
「人々の願いに寄り添うスタンスで」とおっしゃていた及川住職は、お墓の継承問題、孤立死問題など社会的な背景と環境保全の観点から、約3年の年月をかけて「東京里山墓苑」を開設されました。
人と自然とつながりを感じ、また自然に感謝しながら、人も自然の中で循環していく新しいお墓の形態です。
樹木葬「東京里山墓苑」について
延寿院「東京里山墓苑」を、実際に歩いて案内していただきました。
○樹木葬
里山全体を象徴する巌(いわお)のモニュメントと山桜の下に、合祀墓「森羅」(しんら)があります。合祀墓は他の人のご遺骨を一緒に埋葬するため、お墓参りに訪れる方が絶えず、この日も新しいお花がお供えされていました。
奥に進みますと、個人墓「花暦」(はなごよみ)が広がります。
生態系に配慮しながら、桜を中心に季節の花や樹木が植えられており、これから数十年かけて景観を整えていく計画だそうです。(写真は2013年9月現在)
冬には葉が落ち、地面はフカフカと落ち葉に覆われ、春には花が咲くーー季節ごとに表情が変わります。
地面に四角い区画を示すロープが張られており、中央に杭が打たれています。地表に出ている杭の断面には、お墓に入る予定の方のお名前が記されています。個人の埋葬場所を示すために打たれた杭は、骨壺の埋葬場所に樹の根が張らないようにという工夫でもあるそうです。
○骨壺「木魂」(こだま)について
個人墓「花暦」には、多摩産の木材を利用した木製の骨壷「木魂」にお骨を入れて埋葬します。地表から約50センチくらいまでにしかバクテリアがいないため、分解されにくくなってしまうことから、骨壺はコンパクトに作られているそうです。
○手元供養
同じく多摩産材を利用した小さな卵型の容器は、手元供養用です。最近では手元供養を希望する方も多いとお聞きしました。
○杉塔婆について
国産杉を使用した杉塔婆の普及に関して、日ノ出町の下野材木店・下野博栄さんよりお話がありました。
外材の輸入に頼っている現在、日本の林業は危機的状況です。放置された山は荒れ、私たちは身近にあるはずの資源を遠くから取り寄せて使用している状況です。
昨年2012年8月に開催された「お坊さんと行く『東京の山を知る』スタディ・ツアー」では、下野さんに多摩の山と製材工場・原木市場・杉塔婆工場などをご案内していただきました。
樹木葬について ディスカッション
本日参加されていたお坊さんたちを中心に、樹木葬についてディスカッションを行ないます。
樹木葬、海への散骨など自然葬は、古来日本人が行なっていた風習です。
戦後、先祖代々のお墓が定着しましたが「家制度」を前提にしたお墓の形式は、現代の少子化社会の時代にそぐわなくなっています。
今回の樹木葬の里山墓苑を見学を通して、「自然と人との関係を感じ、いのちのつながりを感じるお墓」「毎日供養をしてもらって、お墓参りもできるのは良い」という感想がありました。
お骨やお墓を考える時に、御魂(みたま)について考えてみましょうというお坊さんの言葉がありました。
亡き人やご先祖さまとの会話の場であり、仏さまのもとで安らかな眠りにつく場所がお墓です。
魂の依り代(よりしろ)としてのお墓をどう捉えるかという問題について、現代の日本人の心の中に揺らぎを感じます。
最近、お墓を売り物として安い価格を前面に出した広告などを見かけます。
お墓を「モノ」としてではなく、そこに信仰心や御魂を感じてほしいと、お坊さんからメッセージがありました。
○まとめ
今回の「東京里山墓苑」の樹木葬では、自然と人との関わりの中で、人を含めて地球上のすべてのいのちが循環していること、自然の恵みを受けて人が生きていることを強く感じました。
木製の骨壺で木のぬくもりに抱かれて、時間と共に自然に還っていく。「家を継ぐ」「お墓を継ぐ」という形式が失われつつある今、私たちはお墓やお骨の行方に何を求めていくのでしょう?
「仏教ひとまわりツアー『お骨の行方』」では、お墓やお骨の行方を通して、今生きている私たちが何を感じ、どのように生活に活かしていくのかを考えていきます。
○ご案内
今月で「寺ネット・サンガ」は5周年を迎え、「寺ネット・サンガ」代表の中下大樹さんよりご挨拶がありました。
定例会「坊コン」や「仏教ひとまわりツアー」は、様々な問題についてお坊さんを中心に集まった仲間たちと語らう場です。
気になるテーマに合わせて、またご都合の良い日にお気軽にご参加いただければと思います。
第13回 仏教ひとまわりツアー「お骨の行方」 樹木葬
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