仏教ひとまわりツアー 各宗派本山めぐり「増上寺」 寺ネット・サンガ 事務局 仏教ひとまわりツアー 増上寺 寺ネット・サンガ
仏教ひとまわりツアー 各宗派本山めぐり「増上寺」
仏教ひとまわりツアー
2014-09-01
仏教ひとまわりツアー 各宗派本山めぐり「増上寺」
2014年8月30日(土)、寺ネット・サンガ主催「仏教ひとまわりツアー」が開催されました。
各宗派の大本山をめぐりながら、「修行僧の毎日」に焦点をあてた「仏教ひとまわりツアー」。第3回目のお寺は、東京タワーの近く、徳川家の菩提寺としても知られる浄土宗大本山「増上寺」です。
当日は40名以上の参加者が集まり、賑やかなツアーとなりました。
増上寺のお坊さんから、境内の案内を兼ねて「修行僧の毎日」についてお話を伺いました。
○浄土宗とは
鎌倉時代、政権争いの他、飢饉や疫病などの天災によって、人々は不安の中暮らしていました。僧侶たちは権力者と結びつき、貧しい庶民は救われることなく、すがるものもありませんでした。
比叡山では「智恵第一の法然房」と称されるほど、勉強熱心であった法然上人は、皆が平等に救われる道を求めます。法然上人は『一切経』の中から、阿弥陀様の御本願四十八願のうち、第十八番目にすべての人々が平等に救われる道を見いだしました。
法然上人のお言葉に、「智者(ちしゃ)のふるまいをせずしてただ一向に念仏すべし」とあるそうです。自身の至らなさを自覚(愚者の自覚)し、「こんな私ですが、どうぞお救い下さい」とお念仏を一心にお称えして阿弥陀様に救いとって頂き、西方極楽浄土に生まれることを願います。
浄土宗のお坊さんの修行の基本は、一心に「南無阿弥陀仏」とお称えすることだそうです。
お念仏の「南無」の部分は「帰依します」という意味で、お坊さんたちは節をつけて、ひたすらお称えします。
本日も移動中の廊下では、修行しているお坊さんのお念仏の声が、絶え間なく聞こえていました。
お坊さんのガイドで増上寺境内を巡る
徳川家康は松平家という家柄で、三河の地(現在の愛知県)の出身です。江戸城を居城とする際に増上寺を菩提寺とし、現在の千代田区平河町のあたりから芝の地にお寺を移転しました。
昭和20年(1945)の空襲でお寺の大部分を焼失という苦難に遭いましたが、焼失をまぬかれた三解脱門(さんげだつもん)や経蔵には当時の面影を偲ぶことができます。
○お坊さんのガイドで巡る「増上寺」
大殿→西向聖観世音菩薩→安国殿→徳川将軍家墓所→鐘楼堂→三解脱門→経蔵→圓光大師堂(プチ修行)
・徳川将軍家墓所
特別公開日にのみ参拝できます。本日のツアーでは、増上寺のお坊さんに案内をして頂きながら、お参りしました。静寛院和宮様の宝塔の前では、第14代将軍徳川家茂との仲睦まじいエピソードなどをお聞きし、隣合っている御夫婦の宝塔を拝見しながら、当時のお二人の様子に想いを馳せました。
・安国殿
徳川家康が合戦の前に必勝祈願をし、出陣の際は共に戦場に赴いたという守護念持仏「黒本尊」様がお祀りされています。香煙によって仏像が黒くなった、祈願に訪れる人々の厄を一身に背負って黒くなった、などがお名前の由来です。
勝運・厄除けにご利益ありと有名で、ツアー中も多くの一般の方々が参拝に訪れていました。
こちらでお土産タイムをとり、ツアー参加者は今日の思い出の品を求めていました。
・経蔵
経蔵の中央には八角形の大輪蔵があります。回転式の書架のような建物です。
『一切経』が納められている輪蔵は、回すと『一切経』をすべて読誦したことと同じ功徳を授かると言われています。今回特別に、ツアー参加者は輪蔵を回す体験をさせて頂きました。
プチ修行体験
圓光大師堂にて、増上寺のお坊さんに教わりながらプチ修行です。参加者たちは「別時念仏会(べつじねんぶつえ)」を体験しました。
常日頃、お念仏をお称えしていると怠け心が出てきて、お念仏がおろそかになります。「この時間はきっちりとやりましょう」と時間を決めて修行することを言うそうです。
・お念仏をお称えする
木魚を叩きながらお念仏をお称えします。
口の動きと木魚を叩くタイミングをずらすのがポイントです。声が木魚の音でかき消されないようにするためです。
先導するお坊さんと交代で、途切れることなくお念仏をお称えします。
・礼拝の作法
接足作礼(せっそくさらい)と呼ばれる、仏様への最上級の礼拝方法も教わりました。額と両肘を地につけながら、手のひらを耳の上に、仏様のおみ足を頂くような感覚で水平になるように差し上げます。
20分ほど、お念仏をお称えしながら礼拝を繰り返しました。
始めは参加者も慣れない様子でしたが、途中で足並みが揃ってきました。ところが次第に疲れてきたのか、木魚のタイミングがバラバラになる場面もありました。
ツアー参加者からは「同じことを繰り返すのは難しいね」という感想が出ました。
お坊さんたちは、このような修行を休憩をはさみつつ、何時間も続けるのだそうです。慣れないうちは「いつ終わるのだろう」などと、関係のないことが頭に浮かんでしまいます。お坊さんのお話によると、続けているうちに無心になってくるそうです。
最後に、増上寺のお坊さんから「至らない自分に気が付き、阿弥陀様への信仰へ向かうこと。これが浄土宗です」というお話がありました。
○まとめ
今回の「仏教ひとまわりツアー」は、お坊さんの修行のお話、プチ修行体験、増上寺の歴史、徳川家ゆかりのエピソードなど盛りだくさんな内容でした。
プチ修行を通して、「愚者の自覚」という言葉を思い起こしていました。単純なことを一回一回丁寧に、ひたすら繰り返すことの難しさーー日々繰り返される日常の中で、大切なことをおろそかにしているのではないだろうか、とあらためて自身の生活を見直す機会になりました。
天候にも恵まれ、お寺の背後にそびえる東京タワーの景観も楽しく、プチ修行を終えたツアー参加者の顔は晴れ晴れとしていました。
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仏教ひとまわりツアー 増上寺