寺ネット・サンガ「坊コン」「宗活について」わたしの宗教的感性を耕す活動

わたしの宗教的感性を耕す活動

○「サンガの『宗活』」お坊さんといっしょに わたしの宗教的感性を耕す活動



12月5日(水)に行われたネット・サンガ「坊コン」。
神奈川県平塚市にある浄信のご住職吉田健一さんのお話です。



お通夜の際、吉田健一さんはお通夜の前に、いつもこのようなお話するそうです。

「これからのお通夜、お葬式はお別れの儀式ではありません。故人との新しい関係を再構築していく第一歩です」と。


これまでの故人と築いてきた関係を断つ、また大切な人を失った喪失を埋めるための儀式ではないのです。
吉田健一さんがこのお話する背景には、「かけがえのない」大切な人を失ったことは、他の何かで埋められるはずがないという思いがあります。


吉田健一さんは、私たちに問いかけます。
故人は今すばらしい世界へ旅立ち、安らかな気持ちかもしれませんが、たったひとつ「憂い」があるとしたら何か。それは、この娑婆の世界に遺してきた人たちのことだろう、と。
故人は、この世を去ったあとも、現世に生きている私たちを見守っています。そして、自分が故人になった際には、やっぱり向こうの世界から現世に生きている人たちを振り返って、見守っていきたいと思うのではないでしょうか。



英語で「continuing bonds」という言葉があるそうです。
初めてお聞きした言葉なので調べてみますと、もともとは米国の宗教心理学者デニス・クラスの提唱した言葉で、吉田健一さんは京都大学の宗教学者カール・ベッカー氏の本を読んで知ったそうです。

日本語訳で「続く絆」という意味で、亡くなった人との絆をつないでいく、という古くからの日本人の供養の心を表しています。

私たちは、遺影に向き合い、仏壇に手を合わせ、時には故人に語りかけることもあります。
日本人は当たり前のことのように感じますが、外国の方々の視点からすれば、生きているように故人に対することが、不思議に感じられるそうです。

意識しないうちに、私たちの生活の中に「宗教的感性」が備わっているのですね。

寺ネット・サンガ「坊コン」「宗活について」かけがえのない「あなた」の存在

かけがえのない「あなた」の存在

お葬式は、「肉体的・社会的・霊的」の3つの変換の儀式と捉えた場合、現在の日本では、お葬式は「社会的」という部分が重要視されている傾向があります。

その人が亡くなったことで、社会的役割を他の人へ引き継ぐ、また家督を引き継ぐなど、お葬式は引き継ぎの場のように思われがちです。弔問に訪れた方々に気を遣い、故人を偲ぶ時間もそこそこにお葬式が終わってしまった、なんて経験をした方もあるかもしれません。



しかし、お葬式で一番注目してほしいのは「霊的」な部分だと吉田健一さんは言います。
なぜなら、社会の中での人間の役割は入れ替わっていきますが、「あなた」という存在は、たった一つの「かけがえのない」ものだからです。


誰かのため、また社会のために生きてきた人々が、その役目を終えて去る時――誰の役にも立たない、自分は用のない人間なんだ、と立ち止まってしまうことがあるかもしれません。
そのような苦しみ、つらい気持ちを抱えている人々に、吉田健一さんは「立ち止まったら、ゆっくり考えてほしい」と語りかけます。


「なぜ生きているのか」という問いは、私たち生きている人間ひとりひとりにとって重大なテーマです。
時間をかけて、自分の人生についてゆっくり考えることは、とても大切な時間でもあるのです。


社会的立場を去った時、本当に見えてくるのは、他の誰と替えることのできない「わたし」という存在。
「かけがえのないわたし」「かけがえのないあなた」、またお互いにつないでいる「きずな」のことを思えば、もっと人生は豊かになるはずです。



喉の調子が悪いながら、心打たれるお話を熱く語り終えた吉田健一さんに、大きな拍手が起こりました。

寺ネット・サンガ「坊コン」「宗活について」私にとって宗教的感性といえば・・・

私にとって宗教的感性といえば・・・

「坊コン」後半は「私にとって宗教的感性といえば・・・」というテーマです。

グループに分かれて、普段の生活の中で「こんな場面で宗教を意識した、感じた」ということを話し合います。



・小さな頃から、お仏壇に手を合わせたり、お墓の前で自然に手を合わせていたこと。

・童謡など、日本人の心の中で共有しているものに感じる。

・光を見た時、人に感謝する時など、日常生活の中の瞬間。

・「生」や「死」について考える時など。

○まとめ


感じ方は人それぞれ。誰にでも「こう感じる」という瞬間は日常的に訪れます。

ところが、その時になぜ自分がそう感じたのか、ということを真剣に考える機会は少ないように思います。

普段の生活の中で、自分が「感じる」「感じた」ことを「なぜ?」と振り返ってみるのも良いかもしれません。

今回の「坊コン」では34名の方が、本日のテーマである「宗活」に参加しました。

このような問題について語り合い、お互いに意見を共有し、誰かの意見で気づきを得るのが「宗活」です。
「宗活」の中で特に感じたのは、限りある人生の中で「かけがえのないわたし」に気がついた時、「かけがえのないあなた」を大切にしたいという気持ちが自然と生まれてくるということです。



「あなたの人生をあなたらしく生きて」という吉田健一さんの言葉が、今も心に響いています。

寺ネット・サンガ「坊コン」「宗活について」

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