「天国と地獄」  藤尾聡允~天国に逝く人、地獄に逝く人~

~天国に逝く人、地獄に逝く人~

私たちのいのちは授かりものです
いつか必ずお返しする日を迎えます。

人間だけでなく動物も虫も魚も鳥も、
そして道端の草花や森の木々など自然の生命も、
この世の生きとし生けるもの全てひとしく…。

仏教は区別をしても差別はしない宗教、
「みんな違ってみんないい」というのが本質です。

旅立ち方は様々です。
天寿を全うする人もいれば、
病気、事故、事件、自死で旅立つ人もいるでしょう。

どんな旅立ち方をしても、お釈迦様はあの世でみんなを平等にお迎えして下さいます。
「ようこそ、よく来たね」
「よく頑張って来たね」などと。
死に方の如何を問いません。

なぜなら、お釈迦様はこの世に生を受け、
生きていく事はとても辛く苦しい荊の道だと説いた方だからです。

そんな苦しみの人生を紆余曲折・七転八倒しながら生きて来た人は、
誰でも分け隔て無くみな平等に迎えて下さる、
それが仏教(ブッダの教え)です。

やがて四十九日の旅路の終わりが近づくころ、彼岸では、
おじいちゃん、おばあちゃん、そしてもっと遠い昔のご先祖様たちも一緒に
「まだかまだか」
「そろそろじゃないかな」
とソワソワし、ワクワクながらあなたを待っていてくれるでしょう。

そしてようやく辿り着いた時には、
「ありゃ、お前さんがわしのひ孫かや」
「じいさんによう似とるわい」
「よう来はったな」
「ばあちゃんが、天国を案内しちゃる」などと。
大歓声の中、パチパチと拍手をもって迎えてくれるでしょう。

さて、それでは、一体誰が地獄に行くのでしょう。

それは、私たち僧侶です。
私たちは率先して地獄に向います。

なぜなら、この世の中には方向音痴の人がいっぱいいるからです。
そんな人たちは、四十九日の旅路の途中で道を間違え、地獄に向かってしまうこともありえます。
もしそういう人達が地獄の門までやって来たら、
「おい、こっちは違うよ」
「大丈夫、わしが天国まで連れて行くから心配しなさんな」
と道に迷った不安な人達を安心させ、
無事に天国に送り届けるのが僧侶の役目だからです。

僧侶の仕事、それはこの世でもあの世でも変わりありませんね。

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